いい意味で期待を裏切られた。
凄く好きな映画だった。
遺伝子を調べれば、
産まれた瞬間に、
寿命が何年なのか、どんな病気にかかるか、IQも体力も性格も全て分かるまで科学が発展した世界。
こんな世界で自然に産まれることは特別な事。
それは遺伝子の操作をしないということを意味する。
そして、それは神の子と呼ばれる。
体力も、見た目も、目の色も、将来太るか、禿げるか、暴力性があるかさえも全て親の思い通りにデザインして産む事ができる。
それは科学者の子と呼ばれる。
神の子として産まれたビンセントは
寿命も短く宇宙飛行士には適さない。
しかし、宇宙飛行士になるために
優秀な遺伝子を持った人間へと成りすます。
「何ができて
何ができないか決めつけるな」
その成りすまし方が、いじらしく、見ていて辛い。
だが、ビンセントの夢がその行為によって本気であることが伝わってくる。
波打ち際で体を洗うシーン、
悲しくて滑稽で残酷。
嘘をまといながら生きていく人間のみすぼらしさを凄く表現していた。
人間のみすぼらしさをまざまざとあぶり出した海も、
荒波の中を泳ぐシーンでは意思の強さのみが運命をも変えていくという人間の尊厳をドラマチックに演出していて良かった。
イーサン・ホークやっぱり好きだ。
ジュード・ロウもいい。
運命に抗うということを、
SFとサスペンスで静謐に表現した名作。
「一年は長いな」
「そんなことないわ、太陽を一周するだけだもの」